OTTAVA Domenica 第41回「海のアリア」(7月19日放送)

本日のテーマは「海のアリア」。

あすの「海の日」にあわせて、大西洋に北海、アドリア海……さまざまな色合いの海や、海へのあこがれを描いた作品を集めてお届けします。

アルベニス:旅の思い出~海にて
カベソン:賛歌「めでたし、海の星」第6番
ブリテン:「ピーター・グライムズ」~4つの海の間奏曲
シューマン:ロマンス 第2集 ~海の真ん中に
シューベルト:海の静けさ D.216
ドビュッシー:交響詩「海」~風と海の対話
チャイコフスキー:幻想序曲「テンペスト」
メンデルスゾーン:「静かな海と楽しい航海」序曲
ヴィヴァルディ:協奏曲 ニ短調「マドリガル風」RV.129

旬の話題では、アンドリュー・ロイド=ウェバーのミージカル『サンセット大通り』、二期会のモーツァルト『魔笛』、そしアダム・クーパーの新境地が目撃できるストラヴィンスキー『兵士の物語』をご紹介。

カレーもおいしい夏本番。美しい音楽と本とともに、今週もすてきな一週間をお過ごしください。

 

【3時のモーツァルト】
交響曲第39番~第1楽章(フンメルによる室内楽版)

 

【日曜日の本】&【麻衣のオススメ】
萩尾望都『海のアリア』第1巻(小学館文庫)

「八月の朝――ぼくらはヨットを出した そんなに遠くへ行くつもりじゃなかった」。嵐の海に消えた少年が、半月後に見つかった。還ってきた少年アベルは記憶も地球人の常識も喪失し、まるでエイリアン。そんなアベルに突然赴任してきた音楽教師が不思議な言葉を告げる。「君はベリンモン、私の楽器だ」。楽器扱いされたアベルは大反発。ところが宇宙生命体ベリンモンの作用でアベルの超能力が覚醒する――!

この『海のアリア』が書かれた80年代後半、萩尾望都はバレエを題材にしたシリーズを発表していました。ある意味、その極限の形が、音楽をテーマにしたこの美しいSF作品。音楽好きなら「ベリンモン」という感応楽器(パートナーと感応して音楽を産み出す生物楽器)の音を、一度でいいから聴いてみたいと夢見てしまうはず。海と少年と音楽。スペクタクルとコメディ。『11人いる』などが好きな方にもおすすめです。全2巻。

私は逗子マリーナが好きで、毎年夏に訪れるのですが、完全にこの作品の影響。萩尾望都の描く世界は一種のパラレル・ワールドで、ロンドンはパリのように華やかだし、パリはロンドンのようにシック。『海のアリア』もまた、鎌倉を舞台にしながらどこか異国のよう。マリーナのマンションで食べるカップヌードルを“あこがれの物語フード”に昇華できる作家は、萩尾望都をおいてほかにいないのではないでしょうか。まさに名は体を表すというか、彼女の描く世界は望都(=理想郷、ユートピア)そのものなのかもしれません。

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